不正対応監査のための仕訳テスト

不正防止及び検出に対する責任

不正を防止し発見する基本的な責任は経営者にありますが、取締役会や監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という)も責任を負っています.
しかしながら不正が検出されず、また検出されても過去の処罰の曖昧さによって、各人に不正を思いとどまらせるまでの不正の抑止に繋がっていない組織がほとんどです.
誠実性と倫理的な行動を尊重する企業文化をアピールすることで対外的なイメージ戦略の向上に反比例して、不正を検出に目を瞑り、結果、不正の機会が増えていることは確かです.
このように潜在的に経営者が内部統制を無効化する可能性や企業の業績や収益力に関する投資家の判断に影響を与える利益調整など、経営者による財務報告プロセスに対する不適切な干渉を検討する必要があります.
当然ながら取締役会及び監査役等による監視にはこれらの不適切な会計処理を検出する必要があります.

監査人の責任

監査人には重要な虚偽表示を検出できないというリスクを低減し、不正・誤謬によるかを問わず、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないことについて合理的な保証を得る責任があります.
経営者は、不正を防止するためにデザインされた統制手続を無効化することができるため、直接的又は間接的に会計記録を修正し、結果として不正な財務諸表を作成することが現実的には可能です.
監査人は、合理的な保証を得るために、経営者が内部統制を無効化するリスクを考慮するとともに、誤謬を発見するためのこれまでの監査手続が、不正を検出するためには有効でない可能性を認識し、監査の過程を通じて職業的懐疑心を保持する責任があります.
このため仕訳データを入手し、仕訳テストを実施する必要があります.

監査人に求められること

仕訳テストに関して監査人への要求事項は様々ありますが、特に重要な観点を列挙します.

職業専門家としての懐疑心

監査人は、記録や証憑書類の真正性に疑いを抱く理由がある場合を除き、通常、記録や証憑書類を真正なものとして受け入れることができることになっています.
しかしながら仕訳データについては、頻繁かつ微妙な修正が行われる可能性があるため、その真正性に疑いを抱く理由がない場合でも、通常は網羅性テストを実施します.

監査チーム内での討議

どのよう不正が発生するのか、不正による重要な虚偽表示が行われる可能性につき、討議しま.
不適切な勘定科目の利用やありえない仕訳データ等、検出すべき不正について十分な検討を行います.

不正事例の把握

監査人は、不正による重要な虚偽表示リスクを識別するた公表されている主な不正事例、不正に利用される可能性のある組織特有の取引慣行を認識する必要があります.
監査チームメンバーは、経営者、取締役及び監査役等が信頼でき誠実であるという考えを持たずに、討議が行われます.

虚偽表示リスクを識別と評価

財務諸表全体レベルとして、虚偽表示リスクを識別するために、仕訳テストは実施されるもので、例えば収益認識に不正リスクが存在するという仮説に基づき、仕訳テストの内容が定められます.
このような仮説を適用しないと結論づけ仕訳テストを実施しないこともできますが、その場合には、十分な監査調書を作成することが求められます.
通常、このような監査調書を作成する手間よりも、自動化された仕訳テスト実施の方がタスクは少なくなっていますLor.

「仕訳テスト自動化」スクリプトに含まれる内容

仕訳テスト自動化スクリプトでは、代表的な仕訳テストを自動的に実施し、必要に応じてエクセル形式でアプトプットします.監査人はどの仕訳データに対して適用するか、ファイルを選択するだけ.後はスクリプトが完了するまで、ただ待つだけ.
休憩前に実行すれば、たいがい休憩後には仕訳テストが完了しています.

網羅性テスト

仕訳データは、頻繁かつ微妙な修正が行われているため、通常は網羅性テストを実施します.
「期首・期末の合計残高試算表の差異」と「期中仕訳データの合計残高試算表」との差分がないことを確認するテストが自動化されています.

通例でない会計処理の抽出

一般的に「ほとんど使用されない勘定科目」は期間内で使用頻度が低い勘定科目に自動設定され、該当する仕訳データの抽出が自動化されています.
また「ほとんど使用されない勘定科目」を個別に設定することもできます.

期末時点で行われた仕訳の抽出

期末時点で行われた仕訳データを抽出します.
この他、記帳日と入力日との間隔が、通常の会計処理期間を著しく超過する仕訳データを抽出します.

会計上の見積りに関する仕訳データを抽出

個々の監査人が指定することによって、重要な会計上の見積りに関連する仕訳データを抽出することができます.

休日仕訳、深夜早朝仕訳データの抽出

休日仕訳の他、年末年始や特定の日程で入力された仕訳データを抽出します.
また入力時刻が記録されている場合には、深夜早朝仕明データを抽出することができます<オプション>.

月末仕訳データの抽出

経営成績の改ざん等を目的としたと判断される月末での仕訳データを抽出します.
同じくその修正を目的としたと判断される月初での取消仕訳データを抽出します.

マイナス仕訳、片側仕訳の抽出

マイナス仕訳を抽出します.また片側仕訳を抽出します.

高額仕訳、ぞろ目仕訳の抽出

マイナス仕訳、片側仕訳、ぞろ目仕訳を抽出します.

貸借同一レコード一覧表の作成

借方科目、貸方科目並びに大きい順に金額を配置した一覧表を作成します.
これによって不適切な相手勘定等、検索が容易となります.
初期設定で金額上位10件まで.

仕訳テスト自動化の時間

IDEA形式の他、エクセル形式でも自動的に抽出します.
なお自動化に要する時間はPCのスペックにもよりますが、10万件の仕訳データで約2分弱となっています.

クライアント毎コンバータ作成

仕訳テスト自動化スクリプトは、代表的なタイプの仕訳データを想定して作成されています.
カスタマイズされたERP等を利用している仕訳データでも、コンバータを作成すれば、同じように数分で仕訳テストが完了します.
コンバータの自動化スクリプトについてはご連絡ください.

よくある質問

エクセルで仕訳テストができるというセミナーを受けました. なぜIDEAが必要となるのでしょうか?

監査人が時間をかけて数十万件の仕訳データをエクセルで操作することができれば、エクセルでもできないことはありません.
しかしながら監査人は多くの組織の仕訳テストを実施しなければなりません.テスト項目は決まっているのですから、自動化スクリプトすれば、監査人の時間が効率的に使えます. 抽出された対象が、不正による重要な虚偽表示の疑義に該当するのか、しないのかの判断等、より高度な判断に時間を費やすべきであると考えています.

IDEAで仕訳テストのマニュアルを作成しています. 担当者が個別に操作を実施するのではどうですか?

仕訳テスト自動化スクリプトは、仕訳テストを自動的に実施し、テストに係る時間を短縮するものです. 標準的なテスト項目はそろっていますので、各担当者が自分の担当する会社の仕訳データを指定するだけで、貴社の仕訳テストは標準化されます.もし仕訳テスト全般を個々の担当者の裁量に任せると、データ分析が得意な担当者とそうでない担当者の間で、テスト項目に差異が発生することになります. その場合、なぜそのテスト項目を実施していないのか、実施しなかった合理的理由が必要となります. このため自動化できるテスト項目は自動化し、追加で実施したい項目があれば個々の担当者がより深度あるデータ分析を実施するのが合理的です.

追加した方がよいテスト項目を思いつきました. 仕訳テストのモジュールに追加してくれませんか?

追加した方が良いテスト項目がございましたら、お問い合わせフォームからご連絡ください. 内容をチェックして追加できるものは追加していく予定です. もちろん、追加リクエストにコストはかかりません. 現状で追加の予定があるのは、例えば適切な承認者により承認されていない仕訳データの抽出等です.
現在は、仕訳データのみで分析できる内容をテスト項目にしています.コアなテスト項目は、すべてのIDEAユーザに反映されます
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仕訳テスト自動化スクリプトはオープンソースですか?

オープンソースではありません. IDEAのアドオンソフトウェアで有効期間が設定されています.

仕訳テスト自動化スクリプトは有料ですか?

ご購入のIDEAライセンス数や形態に応じて、価格が設定されています. 詳細はお問い合わせください.

抽出件数が多すぎ、対応に追われています. 件数を絞り込むことはできますか?

はい、できます. エクセル形式のパラメータシートで抽出件数や割合、抽出金額等を設定することができます.
目的としましては抽出された件数を全数チェックするものではなく、仕訳データという数十万件から数百万件にのぼる多数の母集団の中から、一定程度の不適切なデータを抽出するためのツールです.
このため見落としリスクがないようにとの配慮から、初期設定での抽出件数は広く採用されています.

クリック数回で、仕訳テストで求められるテスト項目を実施できるのは便利だと思います.

ありがとうございます. 今後とも必要に応じ自動化スクリプトを増やしていきますので、様々なご意見をお待ちしております.